仕事に行けなくなった日
仕事に行くのが辛くなった。
日々の生活を送っていくためには収入が必要になってくる。勿論、ヲタ活をするためにもお金がとてもとても大切だし、万が一のために備える貯金のためにも。
けれども、職場へ向かう足取りは重い。行きたくない気持ちをぐっと抑えながら、毎日、電車の時間を気にしながら慌ただしく家を出ていく。
障害者雇用で働きはじめてから、9か月が過ぎた。
支援センターからの紹介を受け、職場実習をし、ハローワークで専用求人を出してもらって就業した。
面接では、繰り返し配慮事項について説明をし、支援センターからも何度も申し送りをしてもらっていた。しかし、一向に改善することのない合理的配慮と仕事量の少なさ。
さらに、業務を割り振っていた主担当が他部署へ異動。
日を追うごとに少なくなっていく仕事。
単発で頼まれる業務がある日とない日の差が激しく、ルーチンワークがないことに不安を覚えながら、月日が流れていった。
ある日、課長と課長補佐2名に呼び出されて面談をすることになった。
「働きはじめてから出来るようになった業務はありますか?」
「マニュアル作りは順調ですか?」と仕事に関することを聞かれたり、体調面を心配するようなことも言われた。
最近、体調が良くなかった私の事を気遣ってくれるような発言も思ったが、そうでもなかった。
「体調が悪そうに見えるから、何度か声を掛けようかと思ったが部長に呼び出されて声をかけるタイミングが掴めなかった」と言い訳された。
本当に、私の体調を気遣ってくれているなら、昼休みの間に声を掛けることもできたのではないか。「課長補佐や周りの部署の人が代わりに声を掛けて、コミュニケーションをとりながら、配慮すること」もできたと思うし、「支援機関と連携する」こともできたのではと言いたかった。
しかし、自分に不利になるような発言はしたくなかったのでぐっと堪えた。
(不意打ちの面談に備えて、録音機材(ボイスレコーダー)を肌身離さず持っておけばよかったとすごく後悔した。)
言葉を慎重に選び、「わからないです」と曖昧な返事をしながら、面談の時間は過ぎていった。
仕事に対する指示の受け取り方の違いや自己判断で進めてしまった業務については怒られたりした。しかし、注意されたり、怒られたりすることに慣れていなかったので、話の聞き方が分からなかった。また、強い口調で厳しいことを言われると強く萎縮してしまう。その場には、私の味方は誰一人おらず、すべてが敵だらけ。
毎日、時間通りに出勤しているのに遅刻しかけているような事を言われたり、今日中にやってくれと言われた業務を「午前中までにやってほしいかった」と嫌味も言われて腹が立った。
腹が立つどころではない。沸々と煮えたぎる怒りを頑張って抑えながら、勇気を振り絞って反論した。
即興ラップで相手を言葉の力で打ち負かすこともできず、ヒプノシスマイクも持ってない。虚しい反論は誰の心にも響かず、届かなかった。
そして、課長の口から発せられた「月末までに改善しなければ、こちらとしても考えないといけない」
上司(課長)は、「解雇します」とははっきり言わなかったが、クビにさせられるんだなと思ったらすごく怖かった。今でも状況を理解する事ができないし、突然すぎる最後通牒の突きつけに言葉を失った。
それ以降、私は仕事に行けなくなった。
ボロボロになりながら医者の前で言葉を吐き出し、効果があるのか分からない抗不安薬と抗精神薬を処方される。
もう、私は社会復帰することができないかもしれない。
病気を再発し、休職と離職を繰り返す中で失われていく社会人としての職業スキルと自己肯定感。
同級生の社会人が賞与をもらえる職に就き、仕事に対する愚痴や文句を言いながら日々、頑張っている姿やツイートを見るたびにとても悲しくなる。
障害があっても、同世代の子と同じように働きたい。
賞与や昇給で悩んだり、一喜一憂したり、社会に出て貢献したい頑張りたい。
社交的な性格でなくても、友人付き合いや会社の人たちと交流してみたい。
そういう小さな願いや希望はいつ叶うのだろうか。
障害の有無にかかわらず、個人が尊重される環境で働ける日々がいつくるのか。
一人一人の小さなやさしさがあれば、働きやすい職場が生まれると思う。
しかし、人員配置に余裕がない企業はそこまで手厚く合理的配慮や職場環境が整っていない。少数精鋭で日々の業務に追われながら毎日が過ぎていく。
障害者の法定雇用率を"達成するため"だけに雇用する企業は、障害者雇用納付金を永遠に払い続ける方が雇用する側の負担も少なくないと思う。
法定雇用率の引き上げは労働者である障害者の声を反映しているようには思えない。むしろ、みなし雇用が増加するのではないか。
障害者雇用に対するパワハラや自主退職勧告に追い込ませる企業に対して、法的制裁も行政指導を強権を発動して行える相談機関がない。
泣き寝入りで見過ごされ、結果として退職する選択肢しか残っていないのだ。
支援機関を頼ろうとせず、自分たちで支援しますと言った職場の本心が知りたい。